脱脂後の目の下の凹みに対する治療では、エコーで血管や組織の状態を評価し、
患者さん一人一人に合わせた治療を行うことが重要です。
「目の下のクマが気になって、脱脂を受けたけれど、今度は目の下がくぼんで見えるようになった」
普段診療をしていると、このようなご相談を受けることが多々あります。
下眼瞼脱脂は、目袋の原因となる眼窩脂肪の突出を改善する一方で、
脂肪の切除量やもともとの骨格、加齢による中顔面の変化などによって
術直後から、もしくは数年経ってから下眼瞼の「凹み」で悩まれる患者様が多くいらっしゃいます。
これに対する治療としては脂肪注入などを行うことがありますが、まだ確立した治療法はありません。
私はこの度、エコーガイド下ヒアルロン酸注入という低侵襲な治療で、
脱脂後の凹みをどのように治療できるかについて検討しまとめました。
その治療経験をまとめた論文を執筆し、Plastic and Reconstructive Surgery Global Open(形成外科領域の国際医学誌)に発表しました。
また、AMWC JAPAN 2026では、この治療について「アジア人中顔面の解剖」という視点から学会発表を行いました。
今回はその内容についてご紹介したいと思います。
脱脂術で、なぜ目の下がくぼむの?
下眼瞼脱脂後の凹みには、いくつかの要因が関係します。
単純に「眼窩脂肪を取りすぎた」というだけではありません。
もともとの骨格や深層脂肪のボリューム、リガメントの緩みや皮フのたるみ、
そして加齢による中顔面の変化などが複合的に関係します。
特にアジア人では、欧米人に比べて中顔面がフラットである傾向にあるので、
相対的に眼窩脂肪が突出して見えることが多いです。(ネガティブベクター; Negative vector)
これは眼窩脂肪が多いのではなく、中顔面の高さが低いだけなので
単に眼窩脂肪のみを除去してしまうと
中顔面の低さと相まって目の下から頬にかけて凹みが生じます。
しかしその凹みに対する確立された治療はまだありません。
エコーで修正治療の難しさを乗り越える
下眼瞼への注入治療で、私が特に大切にしているのが超音波(エコー)による評価です。
下眼瞼の皮膚はお顔の中でも特に皮フが薄く表面の凹凸が目立ちやすい部位。
さらに笑顔などの表情の変化も大きく、over fillingに見えがちな部位でもあります。
また下眼瞼周囲には主要な血管も複数走行しており、塞栓症のリスクにも注意が必要です。
さらに下眼瞼脱脂後の組織は術後の癒着や解剖変化によってさらに治療の難易度が高まります。
そこでエコーを使用することで、
①血管の位置 ②注入層の確認 をリアルタイムに行うことができるので
狙った位置、層に確実に注入を行い効果的に結果を出しつつ、安全性を高めることができます。
下眼瞼のヒアルロン酸治療は、注入層が大切
下眼瞼へのヒアルロン酸治療は特に注入層が大切。
目の下は皮膚から骨までの厚みが非常に薄いため、
注入層を誤ると容易に凹凸やチンダル現象(ヒアルロン酸の色味が透ける)が起こります。
エコーで針の位置を確認しながら注入することで、確実に狙った層に注入が可能なので
リスクを最大限に減らしつつ、少量で最大限の効果を出すように努めています。
PRS Global Open 症例報告を執筆しました
今回、下眼瞼脱脂後に持続する凹みに対して、
エコーガイド下でヒアルロン酸注入を行った5症例についてまとめたものが
“Ultrasound-Guided Minimally Invasive Correction of Postblepharoplasty Lower Eyelid Hollowing Using Hyaluronic Acid: A Five-Case Series”
です。
Plastic and Reconstructive Surgery Global Open(PRS GO)は、形成外科領域を代表する国際誌 Plastic and Reconstructive Surgery のGlobal Open版として、形成外科・再建外科領域の研究を世界に発信している医学雑誌です。
今回、自分が日々の診療の中で考えてきたことを、症例シリーズとして医学論文という形にまとめることができ、非常に有意義でした。

AMWC JAPAN 2026でも発表しました
さらに、AMWC JAPAN 2026では、
「経結膜下眼瞼脱脂術後の下眼瞼陥凹に対するエコーガイド下ヒアルロン酸注入
― アジア人中顔面解剖に基づく治療戦略 ―」
というテーマで、この治療について発表しました。
論文では5症例の治療経験を中心にまとめましたが、学会ではさらに一歩踏み込み、
アジア人の中顔面解剖に基づく治療戦略についてお話ししました。
解剖学的知識をもとに、エコーで患者様一人一人の状態を確認しながら、効率よく安全に治療する。
私が日々の診療で大切にしている考え方を先生方にシェアする貴重な機会を頂きました。

― アジア人中顔面解剖に基づく治療戦略 ― AMWC Japan 2026
美容医療を、科学的に。
美容医療は、経験だけで完結するものではなく、解剖学や製剤特性など、
さまざまな医学的知識の上に成り立つものだと考えています。
日々新しい文献や知見が発表される中で、患者様により良い治療を提供するためには、
自分自身の経験則だけに頼るのではなく、
「なぜ、この治療を行うのか」
「本当にこの方法が適切なのか」
を常に問い直すことが大切です。
そして、診療の中で得た経験や考えを、論文や学会発表という形で共有していく。
今回のPRS GOへの論文発表とAMWC JAPANでの発表は、私が日々大切にしている
「安全性と治療効果の両立」を改めて考え、形にする機会となりました。
これからも、目の前の患者様一人ひとりの解剖や加齢変化を丁寧に見極めながら、
必要最小限で、自然で美しい美容医療を追求していきたいと思っています。

