「最近、こめかみがへこんできた」
「顔がなんとなく神経質そうに見える」
このような変化の原因のひとつが、こめかみのボリュームロス(temporal hollowing)です。
こめかみは顔の中でも意外に年齢変化が現れやすく、お顔の印象を左右するパーツです。
ヒアルロン酸注入によって適切にボリュームを補うことで、
顔全体のバランスを整え、自然な若々しい輪郭を取り戻すことが期待できます。
なぜ年齢とともにこめかみがへこむの?
こめかみのへこみは、単純に脂肪が減るだけで起こるわけではありません。
こめかみのへこみは、加齢に伴って、superficial temporal fat(浅側頭部の脂肪)や深部の脂肪、
側頭筋、さらに側頭骨など、
複数の組織に変化が起きることでボリュームロスが起こります。
エコーを用いた研究では、こめかみは17ものレイヤーから構成されていると言われています。
そのため、どの層の変化がこめかみのへこみに影響しているかは、患者様によって異なります。

こめかみヒアルロン酸と一言でいっても、
どの層を選択し、どのように注入するかが、仕上がりの美しさや安全性を左右するといえます。
ヒアルロン酸はどの層に注入するの?
こめかみの注入層については、複数の方法が報告されています。
代表的なのが、superficial temporal fasciaとdeep temporal fasciaの間の層に注入する方法です。
また、superficial temporal fat pad(STFP)そのものを注入ターゲットとする方法も報告されています。
ただ先ほども述べたように、こめかみは17もの多層構造からなっています。
そのため触診や術者の手の感覚だけで、狙った層に正確に針先を到達させることは容易ではありません。
エコーで組織の層構造や血管、針先の位置を確認しながら注入することが、
より安全で正確な治療につながります。
「浅いところに入れれば効果的」、「深いところに入れれば安全」とは限らない
こめかみは、皮膚から骨までの間に多くの組織が存在する、解剖学的に複雑な部位です。
深い層への注入は、表面から注入するよりも自然なボリューム形成が期待できる一方、
十分なボリュームを出すためには、より多くの製剤が必要になる場合があります。
では、浅い層にヒアルロン酸を入れて、効率よく膨らませるのはどうでしょうか?
私はおすすめしません。
こめかみの皮下組織には浅側頭動脈(superficial temporal artery)が走行しており
血管塞栓のリスクがあります。
またヒアルロン酸の吸水性により、注入直後は綺麗でも、
その後製剤が水を吸ってぶよぶよとした仕上がりになる可能性があります。
それでは骨膜上なら安全でしょうか?
答えはNOです。
深部にはdeep temporal arteryなどの血管が存在しますが、ただ触れるだけ(触診)ではわからないことも多いです。
また骨膜上は確かに仕上がりは綺麗ですが、
注入の仕方によっては意図せず一部が側頭筋内に入る可能性があります。
これもやはりエコーで注入層や血管を確認することが大切ですね。
こめかみのヒアルロン酸で「失敗しない」ためのポイント
① 注入する「層」を意識する
こめかみには17もの解剖学的層があると言われています。
同じ量のヒアルロン酸でも、浅い層と深い層ではボリュームの出方が異なります。
自然な仕上がりを目指すためには、エコーを確認し患者様ごとに適切な注入層を選択することが重要です。
② 血管・神経の走行を確認する
こめかみには様々な層に複数の血管や神経が走行しています。
特に浅側頭動脈や深側頭動脈などの位置は個人差もあるため、
エコーによる血管位置の確認を行うことが安全性の向上につながります。
③ 「入れすぎない」
こめかみは皮下組織が薄いので
ヒアルロン酸の吸水性によって直後よりふっくらした仕上がりになることが多いです。
一度に大量に注入して丸く膨らませるのではなく、
前額部・眉・頬・頬骨のボリューム感も見ながら、必要な部分だけを補うことが
自然な仕上がりにつながります。
まとめ
こめかみのヒアルロン酸注入は、単純に
「へこんだ部分にヒアルロン酸を入れる」治療ではありません。
「なぜへこんでいるのか」
「どの組織のボリュームを補うのか」
「どの層に注入するのか」
まで考えて治療することが、自然な若返りにつながります。
そして、こめかみには多くの血管や神経、脂肪、筋膜、筋肉が存在するため、
「実際にどこに針先があるのか」を確認することがとても大切です。
エコーを用いて組織の層構造や血管、針先の位置を確認しながら、
一人ひとりの解剖に合わせて注入層を選択する。
それが、自然で美しいこめかみをつくり、失敗を避けるための重要なポイントだと考えています。

