目の下の注入治療としてよく行われるベビーコラーゲン注射。
ベビーコラーゲンとは、一般にHumallagen®(ヒューマラジェン)を指し、
ヒト胎盤(プラセンタ)由来のコラーゲン製剤です。
Ⅰ型コラーゲンとⅢ型コラーゲンが50:50の割合で配合されています。
Ⅰ型・Ⅲ型コラーゲンは、どちらも本来私たちの皮膚に存在する主要なコラーゲンです。
Ⅰ型コラーゲンは皮膚の強度や構造維持に、
Ⅲ型コラーゲンは柔軟な組織形成やⅠ型コラーゲンとともに形成されるコラーゲン線維の構築に関わっています。
Ⅲ型コラーゲンは胎児や新生児の組織、
また創傷治癒の初期段階で比較的多く認められることから、
美容医療では「ベビーコラーゲン」と呼ばれています。
日本では主に、目の下の凹みやクマ、小じわなどの注入治療に用いられています。
では、具体的にヒアルロン酸注入とはどのような違いがあるのでしょうか?
ベビーコラーゲンとヒアルロン酸の違い
① チンダル現象が起こりにくい
コラーゲン製剤は、その名の通りコラーゲンを主成分としています。
ヒアルロン酸製剤と比較した場合の特徴の一つが、
浅い層に注入してもチンダル現象が起こりにくいことです。
チンダル現象とは、皮膚の浅い部分にヒアルロン酸を注入した際に、
光の散乱などによって注入部位が青みがかって見える現象です。
特に目の下の内側は、皮膚から骨までの距離が短く、組織の厚みが非常に薄い部位です。
そのため、ヒアルロン酸を浅い層に注入すると、
製剤が透けてチンダル現象が起こる可能性することがあります。
一方、ベビーコラーゲンはこのような青みのある色調変化を起こしにくいため、
皮膚の薄い部位の細かな凹凸を整える際にも選択肢となります。
また、目の下の青クマ・紫クマは、薄い皮膚を介して眼輪筋の色調が透けて見えることで生じます。
このような場合には、眼輪筋の上の浅い層に注入することで、皮膚の厚みを補い、色調を目立ちにくくする効果が期待できる場合があります。
② 吸水性が低い
もう一つの特徴が、ヒアルロン酸と比較して吸水性が低いことです。
目の下は、注入後の浮腫みが目立ちやすい部位です。
ヒアルロン酸には水分を保持する性質があるため、
製剤の特性によっては注入後に水分を引き込み、浮腫みが目立つことがあります。
また、目の下はリンパの影響を受けやすい部位でもあります。

注入量が多すぎたり、適切でない層に過剰なボリュームを加えたりすると、浮腫みが目立つ原因となる可能性があります。
そのため、吸水性の低いコラーゲン製剤は、
目の下のような浮腫みが問題になりやすい部位で良い選択肢の一つとなります。
ベビーコラーゲンのデメリット
一方で、ベビーコラーゲンにも注意点があります。
① 注入後の赤み、腫れ
まず、注入後に赤みや腫れなどの炎症反応が起こる可能性があることです。
また、Humallagenを含むフィラー治療では、
感染症や予防接種などをきっかけとして、注入後しばらくしてから炎症反応が生じることがあります。
発赤、腫脹、浮腫、熱感、疼痛、結節などの症状がみられることがあり、
こうした反応は免疫反応が関与すると考えられています。
② 持続期間が短い
また、ヒアルロン酸製剤と比較すると、効果の持続期間が短いこともデメリットです。
日本人のtear trough治療に関する報告では、Humallagenの効果はおよそ4か月程度とされています。
ただ実際の持続期間には個人差があり、注入部位や量、代謝などによっても変わります。
③ ヒアルロニダーゼで溶かせない
そして、ベビーコラーゲンとヒアルロン酸の大きな違いの一つが、
ヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニダーゼによって溶解できないことです。
ヒアルロン酸は、入れたヒアルロン酸を溶かして修正したい場合や、
血管閉塞などの緊急時に、ヒアルロニダーゼによる分解が可能です。
一方、コラーゲン製剤にはヒアルロン酸のような溶解剤がありません。
そのため、ボコつきや過剰な膨らみなどが生じた場合には、
基本的には時間とともに製剤が吸収されるのを待つ必要があります。
さらに、万が一血管内に誤って注入され、血管閉塞が起こった場合にも、
ヒアルロン酸のように製剤そのものを酵素で分解することはできません。
だからこそ、どの製剤を使用する場合でも、血管の走行と注入する層を正確に把握することが重要です。
私は特に目の下の治療では、必要に応じてエコーを用いて血管の位置や注入層を確認しながら治療を行っています。
まとめ
ベビーコラーゲン(Humallagen)は、ヒト由来のⅠ型・Ⅲ型コラーゲンを主成分とする注入製剤です。
ヒアルロン酸と比較して、浅い層でもチンダル現象を起こしにくく、吸水性が低いという特徴があり、皮膚の薄い目の下の細かな凹みや色調の改善に適した選択肢となります。
一方で、効果の持続期間が比較的短いこと、炎症反応が起こる可能性があること、
ヒアルロニダーゼで溶解できないことには注意が必要です。
どちらの製剤が優れているということではなく、
目の下の解剖学的な特徴や、凹み・クマ・小じわなど、何を改善したいのかによって
製剤を選択することが大切です。
そして、特に血管が複雑に走行する目の下では、
安全性を高めるために解剖学的知識と適切な注入層の確認が重要です。

