「眉間のシワが気になってボトックスを打ったら、
眉尻が吊り上がって怖い表情になってしまった、、、」
それ、**スポックブロー(Spock brow)**と呼ばれる状態かもしれません。
スポックブローとは、眉尻が不自然に吊り上がった状態のことで、
アメリカのドラマ『スタートレック』に登場する
ミスター・スポックの眉に似ていることからこの名前が付けられました。

Botulinum Toxin: Surely, We Can Do Better? Optimizing Results Beyond On-Label Techniques and Teachingより引用
スポックブローはなぜ起こる?
眉間ボトックスでは、
眉を内側に寄せる「皺眉筋(すうびきん)」にボトックスを注入します。
しかし、皺眉筋よりも上方に注入すると、
一部の薬剤が前頭筋(おでこを持ち上げる筋肉)に作用することがあります。
すると、おでこの中央部分の収縮が抑えられ、眉頭付近が上がりにくくなります。
一方で、外側の前頭筋にはボトックスが効いていないため、
眉尻側だけが上方へ引き上げられ、眉が吊り上がります。
また、皺眉筋の一部は前頭筋と線維が交わっているため、
適切に皺眉筋内へ注入した場合でも、
解剖学的な個人差によって前頭筋に影響が及び、スポックブローが生じることがあります。

Botulinum Toxin: Surely, We Can Do Better? Optimizing Results Beyond On-Label Techniques and Teachingより引用
スポックブローになりやすい人の特徴
以下のような方はスポックブローが起こりやすい傾向があります。
- おでこを上げた時に、こめかみ近くまでシワが寄る(前頭筋が外側まで広く分布している)
- 眼瞼下垂や上まぶたのたるみがあり、おでこの筋肉を使って目を開けている
そのため、眉間ボトックスを行う際には、
- おでこを上げてもらい、前頭筋の分布を確認する
- 上眼瞼のたるみや眼瞼下垂の有無を評価する
といった事前診察が重要になります。
スポックブローになってしまったら?
スポックブローが生じた場合は、
眉尻を引き上げている前頭筋の収縮部位に
少量のボトックスを追加することで改善することが多いです。
ただし、患者さんに「ボトックスを打ったら怖い顔になった」という印象を与えてしまうため、
最も大切なのはそもそもスポックブローを起こさない工夫をすることです。
スポックブローを予防するためのポイント
① 皺眉筋の筋腹を正確に狙う
最も収縮の強い部位を狙って注入することが重要です。
エコーを用いて筋肉の位置を確認すると、より正確な注入が可能になります。
② 過度に希釈したボトックスを避ける
必要以上に薄めると薬液が広がりやすくなり、前頭筋へ拡散するリスクが高まります。
③ 左手で皺眉筋をつまみながら注入する
筋肉を把持することで、薬剤の不要な拡散を抑えることができます。
④ 針の向きや深さを意識する
薬液は針先の向いている方向へ広がりやすいため、
刺入部位、角度、深さを適切に調整することが重要です。
⑤ 必要最小限の単位数で注入する
過剰投与は周囲筋への影響を強めるため、
患者さんごとに適切な量を見極めることが大切です。
まとめ
「たかが眉間ボトックス、されど眉間ボトックス」。
眉間だけを見て注入するのではなく、
前頭筋の分布やまぶたの状態など、
上顔面全体のバランスを評価した上で治療を行うことが、自然で美しい仕上がりにつながります。

