• ヒアルロン酸注入に向いてない人がいる?

    手軽にリフトアップや輪郭の変化を目指せるヒアルロン酸注入。

    私自身も、適切な部位に適切な量を注入することで、
    「なんとなく若々しくなった」
    「疲れて見えなくなった」
    という自然な変化を作れる治療だと考えています。

    ただ、実はヒアルロン酸は入れれば入れるほど綺麗になるというわけではありません。

    中には、ヒアルロン酸の効果が出にくかったり、注入量が増えることで不自然さにつながりやすい方もいます。

    今回は、私がヒアルロン酸注入の際に特に注意が必要だと考える3つのタイプをご紹介します。

    ①皮フが厚い人

    ヒアルロン酸によるリフトアップでは、骨格や脂肪の位置関係を考えながら、

    深い層に注入して土台から支えるような治療を行うことがあります。

    ただ過去にニキビを繰り返したような瘢痕化が硬くなった肌や

    光老化によって異常なコラーゲンなどの線維組織が蓄積したような硬い肌だと

    ヒアルロン酸を注入しても肌が均一にリフトアップしづらいです。

    つまりヒアルロン酸を入れてるところと入れてないところで凹凸が生じ

    それを埋めるのにさらに注入を繰り返すと過剰注入になる可能性があります。

    そんな方はまず最初に肌育治療で肌に栄養と水分を与えたり、

    高周波などで引き締めつつ、コラーゲン生成を促すことで肌をリジュビネーションさせることが必要です。

    ②むくみやすい人

    お酒を飲むとすぐ顔が浮腫む人は頬や目周りのヒアルロン酸は要注意です。

    ヒアルロン酸は製剤によって程度の差はあるものの、吸水性(水を吸う性質)があります。

    特に目の下は皮膚が薄いため、もともと浮腫が出やすい方では、

    注入後に腫れぼったさが目立つことがあります。

    また、目の周囲から頬にかけてはリンパ系の流れも関係するため、過剰なボリュームを加えることで、むくみが目立ちやすくなることがあります。

    The Lymphatic Anatomy of the Lower Eyelid and Conjunctiva and Correlation with Postoperative Chemosis and Edemaより引用。目の下から頬、フェイスラインにかけてリンパ路が存在します。

    むくみが出やすい方がヒアルをする場合は注入量を最小限に抑えることが大切です。

    ③大きな変化を求める人

    これは、実はとても大切なポイント。

    ヒアルロン酸の魅力は、
    「数年前の自分に少し戻るような、自然な変化」
    だと私は考えています。

    そのため、

    「誰が見ても変わったと分かるくらい変えたい」
    「輪郭を大きく変えたい」

    という希望の場合、ヒアルロン酸だけで大きな変化を作ろうとすると、注入量が多くなり、

    不自然な仕上がりになることがあります。

    そのような場合には、ヒアルロン酸を追加するのではなく、

    場合によっては手術など、別の治療方法をご提案することもあります。

    ヒアルロン酸のゴールは「気づかれないくらいの変化」

    私が考えるヒアルロン酸治療の理想は、

    「最近なんだか可愛いけど、メイクでも変えた?」くらいの変化です。

    大きく変えるのではなく、
    その人がもともと持っている魅力を活かすように整える。

    そして、時間が経っても不自然にならないように、長期的な経過まで考えて注入する。

    それが、私が考えるヒアルロン酸治療です。

    ヒアルロン酸は製剤や注入部位によって長期間残存することがあります。

    だからこそ、

    「どれだけ入れるか」ではなく、
    「どこに、なぜ、どれくらい入れるのか」

    が大切です。

    ヒアルロン酸は「入れれば綺麗になる治療」ではありません。

    場合によっては、「今日は入れない」という選択も、治療のひとつだと考えています。

  • ヒアルで人中短縮するには

    加齢に伴い、

    「以前より人中が長くなって、顔が間延びして見える」

    とご相談を受けることがあります。

    人中短縮の治療としてよく行われているのが、人中短縮ボトックス(Lip flip)です。

    手軽に受けやすい一方で、口周りの筋肉の働きを弱めるため、

    「ストローが使いにくい」
    「麺類が吸いにくい」
    「口元が動かしにくい」

    など、日常生活の中で違和感を感じる方もいます。

    そのため、ボトックスによる人中短縮に抵抗がある方や、

    もともと唇のボリュームが少ない方には、唇へのヒアルロン酸注入(Lip filler)も選択肢になります。

    今回は、

    • ボトックスによる人中短縮とヒアルによる人中短縮は何が違うのか
    • どのような方に唇ヒアルが向いているのか
    • 人中短縮ヒアルではどのように注入するのか

    について解説します。

    人中短縮ボトックス(Lip flip)とは?

    人中短縮ボトックスは、英語ではLip flipとも呼ばれます。

    上唇の赤唇縁(バーミリオンボーダー)付近に少量のボツリヌストキシンを注入し、口輪筋の働きを部分的に弱めることで、

    上唇が内側に巻き込まれにくくなり、赤唇部を外側に見せる治療です。

    その結果、上唇の見える範囲が増えることで、人中が相対的に短く見える効果が期待できます。

    特に、

    笑ったときに上唇が内側に巻き込まれて薄くなる方

    には向いている治療です。

    ただし、口周囲の筋肉の動きを抑える治療であるため、効果が強く出ると、

    ストローを吸う、麺をすする、口をすぼめるといった動作に違和感が出ることがあります。

    ヒアルによる人中短縮とは?

    一方、ヒアルロン酸による人中短縮は、いわゆるLip filler(唇ヒアル)です。

    上唇の赤唇部に適切にボリュームを加え、上唇の縦幅を増やすことで、人中を相対的に短く見せることを目的とします。

    特に、

    • 加齢によって唇のボリュームが減ってきた方
    • 上唇の縦幅がもともと短い方
    • ボトックスによって口周りの動きが変化することに抵抗がある方

    には、唇ヒアルが適しています。

    ただし治療のゴールは唇を厚くことではありません。

    鼻の下から上唇にかけての立体感や、上唇の縦方向のボリュームを整えることで、

    顔全体のバランスとしてナチュラルに人中を短く見せることがポイントです。

    ボトックスとヒアルでの人中短縮効果の違い

    ボトックスとヒアルによる人中短縮は、同じ「人中短縮」でも、見え方が異なります。

    Lip Filler Versus “Lip Flip”: Longitudinal Public Interest and a Brief Review of Literatureより引用。
    Lip filler(ヒアルロン酸)は上唇の赤唇部の縦幅を増やすことで、Lip flip(ボトックス)は上唇が内側に巻き込まれるのを抑え、赤唇部を外側に見せることで、人中が短く見える効果が期待できます。

    ボトックスは唇の「巻き込み」を減らして、赤唇を見せる

    ヒアルは唇そのものの「縦幅・立体感」を増やす

    という違いがあります。

    そのため、笑ったときに唇が内側に巻き込まれて薄くなる場合にはLip flipが向いています。

    一方で、加齢によって上唇のボリュームが減り、唇の縦幅そのものが小さくなっている方は、

    ヒアルロン酸によって唇の形態を整える方が適していることがあります。

    「人中を短くする」のではなく、「短く見せる」

    ここで一つ大切なのは、ヒアルロン酸による人中短縮も、ボトックスによるLip flipも、

    基本的には人中そのものの長さを物理的に短縮する治療ではないということです。

    唇の見え方や赤唇部の縦幅を変えることで、顔全体のバランスとして人中が短く見えることを目指します。

    そのため、人中の長さだけを見るのではなく、

    • 上唇の縦幅
    • 赤唇の厚み
    • 上唇の突出
    • 笑ったときの唇の動き

    などを総合的に評価することが重要です。

    ヒアルのメリット、デメリット

    一般的に、Lip flipの効果は数か月程度であるのに対し、

    唇に注入したヒアルロン酸はより長期間効果が持続することが期待できます。

    ただし、唇は顔の中でも非常によく動く部位です。

    そのため、ヒアルロン酸ではmigration(ヒアルロン酸の移動)が問題になることがあります。

    必要以上にヒアルを多く注入すると、migrationのリスクは高まります。

    エコーで解剖を確認して、必要最小限に

    唇は血管が豊富で、解剖学的にも個人差の大きい部位です。

    そのため、唇へのヒアルロン酸注入でも、

    必要に応じてエコーで血管や組織の位置を確認しながら注入しております。

    その方の骨格や唇の形、加齢による変化、笑ったときの動きまで考えたうえで、

    どこに、どのくらいの量を入れるかが、唇ヒアルによる人中短縮では重要です。

    「人中が長くなった気がするけれど、ボトックスで口元の動きが変わるのは嫌」

    という方は、唇のボリュームを整えることで、自然に人中を短く見せる方法も選択肢になります。

  • 目の下のクマをどう治療する?エコーガイド下ヒアルロン酸+ベビコラによるコンビネーション治療

    このたび、日本美容医師会において、

    「目の下のクマに対するエコーガイド下注入治療 ーヒアルロン酸+コラーゲン製剤のコンビネーション治療における私の戦略ー」

    について発表いたしました。

    日本美容医師会 2026 にて目の下のクマに対するエコーガイド下注入治療 ーヒアルロン酸+コラーゲン製剤のコンビネーション治療における私の戦略ーについて発表を行いました

    今回は、私が日々の診療で行っている、目の下のクマに対する治療の考え方についてご紹介します。

    「クマ」と一言でいっても、原因はさまざま

    一般的に「目の下のクマ」と呼ばれるものは、大きく分けると、

    • 茶クマ:色素沈着などによるもの
    • 青クマ・紫クマ:眼輪筋や血管などが透けて見えるもの
    • 黒クマ:目の下の凹凸や影によって生じるもの

    などがあります。

    目の下は、骨格、眼窩脂肪、筋肉、皮下組織、皮膚、靭帯など、さまざまな組織が複雑に重なっている部位です。

    加齢や骨格によってこれらの構造が変化することで、凹みや膨らみ、影が生じ、「クマ」として見えていることがあります。

    そのため、黒クマの治療では、まず「なぜクマができているのか」を見極めることが重要です。

    「土台ヒアル」で改善できるクマと、できないクマ

    目の下の凹みに対しては、ヒアルロン酸によってボリュームを補い、骨格や組織の支持を整える治療がよく行われます。

    いわゆる「土台ヒアル」です。

    適切な層に適切な量のヒアルロン酸を注入することで、

    目の下の凹凸がなめらかになり、クマが大きく改善するケースも少なくありません。

    一方で、ヒアルロン酸だけでは十分に改善しにくい部分もあります。

    例えば、目頭側に残るごくわずかな凹みです。

    目の下の外側からヒアルロン酸で適切にボリュームを補い、全体のバランスを整えることで、かなりの改善が見込めますが、

    皮下組織のボリューム低下や靭帯による引き込みなどがある場合、最後に目頭側のわずかな凹みだけが残ることがあります。

    ここをヒアルロン酸で治療すると、チンダル現象と言ってヒアルロン酸の青みが透けてしまう可能性があります。

    ヒアルロン酸とコラーゲン製剤を使い分ける

    目の下はお顔の中でも特に皮膚が薄い部位で、凹凸やむくみがとても目立ちやすいです。

    そこでヒアルロン酸で補正する部分と、コラーゲン製剤を使い分けて、最小量のフィラーで治療を行うように心がけています。

    具体的には、ヒアルロン酸は主にボリュームが不足している部分、

    一方、コラーゲン製剤は、ヒアルロン酸では治療しにくい浅い層や、皮膚のrejuvenation効果(ハリ感、肌の若々しさ)を出したい部分に使用しています。

    コラーゲン製剤は「ボリューム」だけではない

    コラーゲン製剤には、単純にボリュームを補うだけではなく、

    皮膚の細胞を取り巻く環境、いわゆるECM(細胞外マトリックス)を改善させるような作用も期待されています。

    そのため、凹みを埋めるだけではなく、定期的に治療を重ねることで、皮膚の質感改善効果が期待できます。

    また、眼輪筋の上の浅い層に適切に注入することで、眼輪筋の色調が透けて見える青クマや紫クマに対しても改善が期待できます。

    ただし、コラーゲン製剤はヒアルロン酸と比較すると持続期間が短いので

    ヒアルロン酸で補正できるところはヒアルロン酸で、

    ヒアルロン酸で治療できないところは、コラーゲン製剤で

    というように、目的と注入層に応じて使い分けることが大切だと考えています。

    エコー併用注入治療

    目の下の治療で、もう一つ私が大切にしているのがエコー検査です。

    目の下は皮膚が薄く、血管や筋肉、脂肪、靭帯などの組織が複雑に存在しています。

    さらに、これらの位置や厚みには個人差があります。

    そのため、見た目だけから注入する層を判断するのではなく、エコーを使って、

    • 皮膚・皮下組織の厚み
    • 筋肉や脂肪の位置
    • 血管の走行
    • 注入するフィラーの位置

    などを確認しながら治療を行います。

    特に重要なのは、「どこに入れるか」だけではなく、「どの層に入れるか」です。

    目の下では、わずかな層の違いが仕上がりに大きく影響することがあります。

    ターゲットとする層に確実に注入することで、過剰なフィラー注入を避け、凹凸やむくみなどのリスクをできるだけ抑えるように心がけています。

    まとめ

    目の下のクマ治療では、「ヒアルロン酸か、コラーゲンか」ではありません。

    クマの原因や注入レイヤー、用いるべき製剤をお一人お一人に合わせて選択し、治療することが大切です。

    だからこそ、エコーで実際の解剖を確認しながら、必要最小限の治療で自然に目の下を整えることを大切にしています。

    今回、日本美容医師会でこの治療について発表する機会をいただき、

    改めて、目の下の治療は解剖を理解し、適切な層を見極めることが重要だと感じました。

    目の下のクマが気になる方は、まず「自分のクマは何が原因なのか」を知ることから始めてみてください。

  • 脱脂後の目の下の凹みを、どう治療するか。 解剖に基づくエコーガイド下ヒアルロン酸注入
    脱脂後の目の下の凹みに対する治療では、エコーで血管や組織の状態を評価し、
    患者さん一人一人に合わせた治療を行うことが重要です。

    「目の下のクマが気になって、脱脂を受けたけれど、今度は目の下がくぼんで見えるようになった」

    普段診療をしていると、このようなご相談を受けることが多々あります。

    下眼瞼脱脂は、目袋の原因となる眼窩脂肪の突出を改善する一方で、

    脂肪の切除量やもともとの骨格、加齢による中顔面の変化などによって

    術直後から、もしくは数年経ってから下眼瞼の「凹み」で悩まれる患者様が多くいらっしゃいます。

    これに対する治療としては脂肪注入などを行うことがありますが、まだ確立した治療法はありません。

    私はこの度、エコーガイド下ヒアルロン酸注入という低侵襲な治療で、

    脱脂後の凹みをどのように治療できるかについて検討しまとめました。

    その治療経験をまとめた論文を執筆し、Plastic and Reconstructive Surgery Global Open(形成外科領域の国際医学誌)に発表しました。

    また、AMWC JAPAN 2026では、この治療について「アジア人中顔面の解剖」という視点から学会発表を行いました。

    今回はその内容についてご紹介したいと思います。

    脱脂術で、なぜ目の下がくぼむの?

    下眼瞼脱脂後の凹みには、いくつかの要因が関係します。

    単純に「眼窩脂肪を取りすぎた」というだけではありません。

    もともとの骨格や深層脂肪のボリューム、リガメントの緩みや皮フのたるみ、

    そして加齢による中顔面の変化などが複合的に関係します。

    特にアジア人では、欧米人に比べて中顔面がフラットである傾向にあるので、

    相対的に眼窩脂肪が突出して見えることが多いです。(ネガティブベクター; Negative vector)

    これは眼窩脂肪が多いのではなく、中顔面の高さが低いだけなので

    単に眼窩脂肪のみを除去してしまうと

    中顔面の低さと相まって目の下から頬にかけて凹みが生じます。

    しかしその凹みに対する確立された治療はまだありません。

    エコーで修正治療の難しさを乗り越える

    下眼瞼への注入治療で、私が特に大切にしているのが超音波(エコー)による評価です。

    下眼瞼の皮膚はお顔の中でも特に皮フが薄く表面の凹凸が目立ちやすい部位。

    さらに笑顔などの表情の変化も大きく、over fillingに見えがちな部位でもあります。

    また下眼瞼周囲には主要な血管も複数走行しており、塞栓症のリスクにも注意が必要です。

    さらに下眼瞼脱脂後の組織は術後の癒着や解剖変化によってさらに治療の難易度が高まります。

    そこでエコーを使用することで、

    ①血管の位置 ②注入層の確認 をリアルタイムに行うことができるので

    狙った位置、層に確実に注入を行い効果的に結果を出しつつ、安全性を高めることができます。

    下眼瞼のヒアルロン酸治療は、注入層が大切

    下眼瞼へのヒアルロン酸治療は特に注入層が大切。

    目の下は皮膚から骨までの厚みが非常に薄いため、

    注入層を誤ると容易に凹凸やチンダル現象(ヒアルロン酸の色味が透ける)が起こります。

    エコーで針の位置を確認しながら注入することで、確実に狙った層に注入が可能なので

    リスクを最大限に減らしつつ、少量で最大限の効果を出すように努めています。


    PRS Global Open 症例報告を執筆しました

    今回、下眼瞼脱脂後に持続する凹みに対して、

    エコーガイド下でヒアルロン酸注入を行った5症例についてまとめたものが

    “Ultrasound-Guided Minimally Invasive Correction of Postblepharoplasty Lower Eyelid Hollowing Using Hyaluronic Acid: A Five-Case Series”

    です。

    Plastic and Reconstructive Surgery Global Open(PRS GO)は、形成外科領域を代表する国際誌 Plastic and Reconstructive Surgery のGlobal Open版として、形成外科・再建外科領域の研究を世界に発信している医学雑誌です。

    今回、自分が日々の診療の中で考えてきたことを、症例シリーズとして医学論文という形にまとめることができ、非常に有意義でした。

    Ultrasound-Guided Minimally Invasive Correction of Postblepharoplasty Lower Eyelid Hollowing Using Hyaluronic Acid: A Five-Case Series PRS Global Open 2026
    AMWC JAPAN 2026でも発表しました

    さらに、AMWC JAPAN 2026では、

    「経結膜下眼瞼脱脂術後の下眼瞼陥凹に対するエコーガイド下ヒアルロン酸注入
    ― アジア人中顔面解剖に基づく治療戦略 ―」

    というテーマで、この治療について発表しました。

    論文では5症例の治療経験を中心にまとめましたが、学会ではさらに一歩踏み込み、

    アジア人の中顔面解剖に基づく治療戦略についてお話ししました。

    解剖学的知識をもとに、エコーで患者様一人一人の状態を確認しながら、効率よく安全に治療する。

    私が日々の診療で大切にしている考え方を先生方にシェアする貴重な機会を頂きました。

    経結膜下眼瞼脱脂術後の下眼瞼陥凹に対するエコーガイド下ヒアルロン酸注入
    ― アジア人中顔面解剖に基づく治療戦略 ―
    AMWC Japan 2026
    美容医療を、科学的に。

    美容医療は、経験だけで完結するものではなく、解剖学や製剤特性など、

    さまざまな医学的知識の上に成り立つものだと考えています。

    日々新しい文献や知見が発表される中で、患者様により良い治療を提供するためには、

    自分自身の経験則だけに頼るのではなく、

    「なぜ、この治療を行うのか」
    「本当にこの方法が適切なのか」

    を常に問い直すことが大切です。

    そして、診療の中で得た経験や考えを、論文や学会発表という形で共有していく。

    今回のPRS GOへの論文発表とAMWC JAPANでの発表は、私が日々大切にしている

    「安全性と治療効果の両立」を改めて考え、形にする機会となりました。

    これからも、目の前の患者様一人ひとりの解剖や加齢変化を丁寧に見極めながら、

    必要最小限で、自然で美しい美容医療を追求していきたいと思っています。

  • こめかみのヒアルロン酸注入、「失敗しない」コツとは。

    「最近、こめかみがへこんできた」
    「顔がなんとなく神経質そうに見える」

    このような変化の原因のひとつが、こめかみのボリュームロス(temporal hollowing)です。

    こめかみは顔の中でも意外に年齢変化が現れやすく、お顔の印象を左右するパーツです。

    ヒアルロン酸注入によって適切にボリュームを補うことで、

    顔全体のバランスを整え、自然な若々しい輪郭を取り戻すことが期待できます。

    なぜ年齢とともにこめかみがへこむの?

    こめかみのへこみは、単純に脂肪が減るだけで起こるわけではありません。

    こめかみのへこみは、加齢に伴って、superficial temporal fat(浅側頭部の脂肪)や深部の脂肪、

    側頭筋、さらに側頭骨など、

    複数の組織に変化が起きることでボリュームロスが起こります。

    エコーを用いた研究では、こめかみは17ものレイヤーから構成されていると言われています。

    そのため、どの層の変化がこめかみのへこみに影響しているかは、患者様によって異なります。

    Efficacy, Safety, and Longevity of Hyaluronic Acid Filler Injection in Treating Temple Hollowness by Sonographic Identifying 17 Soft Tissue Layersより引用。

    こめかみヒアルロン酸と一言でいっても、

    どの層を選択し、どのように注入するかが、仕上がりの美しさや安全性を左右するといえます。

    ヒアルロン酸はどの層に注入するの?

    こめかみの注入層については、複数の方法が報告されています。

    代表的なのが、superficial temporal fasciaとdeep temporal fasciaの間の層に注入する方法です。

    また、superficial temporal fat pad(STFP)そのものを注入ターゲットとする方法も報告されています。

    ただ先ほども述べたように、こめかみは17もの多層構造からなっています。

    そのため触診や術者の手の感覚だけで、狙った層に正確に針先を到達させることは容易ではありません。

    エコーで組織の層構造や血管、針先の位置を確認しながら注入することが、

    より安全で正確な治療につながります。

    「浅いところに入れれば効果的」、「深いところに入れれば安全」とは限らない

    こめかみは、皮膚から骨までの間に多くの組織が存在する、解剖学的に複雑な部位です。

    深い層への注入は、表面から注入するよりも自然なボリューム形成が期待できる一方、

    十分なボリュームを出すためには、より多くの製剤が必要になる場合があります。

    では、浅い層にヒアルロン酸を入れて、効率よく膨らませるのはどうでしょうか?

    私はおすすめしません。

    こめかみの皮下組織には浅側頭動脈(superficial temporal artery)が走行しており

    血管塞栓のリスクがあります。

    またヒアルロン酸の吸水性により、注入直後は綺麗でも、

    その後製剤が水を吸ってぶよぶよとした仕上がりになる可能性があります。

    それでは骨膜上なら安全でしょうか?

    答えはNOです。

    深部にはdeep temporal arteryなどの血管が存在しますが、ただ触れるだけ(触診)ではわからないことも多いです。

    また骨膜上は確かに仕上がりは綺麗ですが、

    注入の仕方によっては意図せず一部が側頭筋内に入る可能性があります。

    これもやはりエコーで注入層や血管を確認することが大切ですね。

    こめかみのヒアルロン酸で「失敗しない」ためのポイント
    ① 注入する「層」を意識する

    こめかみには17もの解剖学的層があると言われています。

    同じ量のヒアルロン酸でも、浅い層と深い層ではボリュームの出方が異なります。

    自然な仕上がりを目指すためには、エコーを確認し患者様ごとに適切な注入層を選択することが重要です。

    ② 血管・神経の走行を確認する

    こめかみには様々な層に複数の血管や神経が走行しています。

    特に浅側頭動脈や深側頭動脈などの位置は個人差もあるため、

    エコーによる血管位置の確認を行うことが安全性の向上につながります。

    ③ 「入れすぎない」

    こめかみは皮下組織が薄いので

    ヒアルロン酸の吸水性によって直後よりふっくらした仕上がりになることが多いです。

    一度に大量に注入して丸く膨らませるのではなく、

    前額部・眉・頬・頬骨のボリューム感も見ながら、必要な部分だけを補うことが

    自然な仕上がりにつながります。

    まとめ

    こめかみのヒアルロン酸注入は、単純に

    「へこんだ部分にヒアルロン酸を入れる」治療ではありません。

    「なぜへこんでいるのか」
    「どの組織のボリュームを補うのか」
    「どの層に注入するのか」

    まで考えて治療することが、自然な若返りにつながります。

    そして、こめかみには多くの血管や神経、脂肪、筋膜、筋肉が存在するため、

    「実際にどこに針先があるのか」を確認することがとても大切です。

    エコーを用いて組織の層構造や血管、針先の位置を確認しながら、

    一人ひとりの解剖に合わせて注入層を選択する。

    それが、自然で美しいこめかみをつくり、失敗を避けるための重要なポイントだと考えています。